日本経済新聞 北関東経済版

2023年(令和5年)10月3日 (火曜日)
日本経済新聞 北関東経済版に掲載されました。

宇都宮の柳沼ボデー工場
家畜運搬車の製造強化

2023年10月3日(火曜日)令和5年

 トラック・バスなど大型車両の修理・改修を手掛ける柳沼ボデー工場(宇都宮市)は、家畜運搬車の荷台の製造を強化する。本業は先行きが読みづらく大きな伸びは期待しにくい。家畜運搬車は手間が掛かるため競合他社が少なく、アルミ・ステンレス加工で培った技術を生かせる。茨城県のJA常陸にも納入予定で、JAの「口コミ」などで顧客開拓につなげる。
自動車ディーラーが拠点を構える宇都宮市南部に本社・工場を置く。創業は1937年(昭和12年)。柳沼文秀社長の祖父、政雄氏が創業した。
 戦後の経済成長にあわせてトラック、バスも需要が急拡大。事故や故障も増え、修理需要が伸びた。
ただ、対象は事故車・故障車。顧客に積極的に営業をかけづらく、先行きが読めない。基本的に「待ち」の事業だ。3代目の文秀氏は2011年に3歳で後を継いでから「このままでは先細りになる」と、新規事業のチャンスをうかがっていた。
約3年前、畜産業者から「家畜運搬車を造ってもらえないか」との打診が舞い込んだ。家畜運搬車は製造に手間がかかるため、全国には業者が数えるほどしかない。
 荷物は家畜=生き物だ。運送中にふん尿を出してしまい、清掃・消毒が避けられない。さびや腐食を避けるため素材にアルミやステンレスを使う必要があるが、鋼板よりも加工が難しい。「自社の技術を生かすチャンス」。柳沼社長は決断した。
同社が製造するのは家畜を載せる荷台だ。顧客が調達した大手トラックメーカーの4㌧車の車台に装着する。顧客の注文に応じて、長さ8.5m、幅2.5m、高さ2.6mを上限に対応する。
 4㌧車だと約800㌔まで成長した牛を5頭運べる。ただ輸送中に牛が暴れて傷つき、商品価値が落ちないよう、快適に移動できる荷台作りが必要という。荷台への昇降は後部の仕切り板を倒して、スロープとして利用する。
改造費用は約800万円。トラック本体が1000万円程度なので、顧客は2000万円程度の投資になる。アルミやステンレスは鋼板に比べて高価だが、さび・腐食が避けられるので長期にわたり使用でき、結果的に安く済むとみる。
 これまで本格的に顧客開拓などを手掛けてこなかったので、家畜運搬車への本格参入では知恵を絞った。10月に千葉・幕張メッセで開かれる「第5回国際畜産資材EXPO」に出展。JAへの納入で高品質をアピールして、新規顧客を開拓する。
現在の生産能力は月1台。月2~3台まで受注できるよう、腕のいい技術者の中途採用や、若手社員の採用拡大も検討。
現在、1人のスタッフを15人程度まで増やし、2億円程度の年間売上高を10年後には4億円と倍増させる計画だ。
(苅谷直政)

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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC280YR0Y3A920C2000000/