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昭和26年4月4日第3種郵便物認可
令和7年3月1日発行 (月1回1日) 第75巻第3号
2025
DAIRYMAN
デーリィマン
VOL.75 No.2
ISSN0416-6272
視点 2025
飼料自給力強化の道筋

視点 2025
チーズ国内生産をどう伸ばすか
技術ワイド
ランピースキン病を知って防ぐ
➀症状と予防策の基礎知識
➁農場での生態踏まえたサシバエ防除法
➂感染経路意識した効率的な消毒
新企画
連載 和牛受精卵活用で収益向上
乳用種雌牛評価成績2024-11月
第43回オールニッポン ホルスタインコンテスト読者予想投票募集

写真13 香草のハナンチョと一緒に加熱してつくるバターオイル
にもわたり泌乳が継続する。
アフロ・ユーラシア (アフリカ・ユーラシア大陸)のうち、生乳を通年供給できない乾燥したエリアでは、生乳をバターオイルとチーズに必ず加工している。乳脂肪と乳タンパク質を長期保存しておくことは、牧畜民にとって食料供給の生命線となる。
一年以上にわたり泌乳が続くラクダ牧畜民では、生乳は必ずしも加工保存されず、周年で生乳のまま飲まれることが多い。シダマ農牧民にとっても、乳脂肪と乳タンパク質を通年供給するため、保存を意図したバターオイルやチーズへの加工が発達する必然性はない。ではなぜ、彼らはバターオイルのみ加工しチーズはつくらないのだろうか。
バターオイルはハーブで香り付けされ、エンセーテ料理の仕上げとして調味料のように利用されていた (写真8)。 トウモロコシ料理のフーフィサも同様にバターオイルで仕上げられる。そして、自然発酵乳やバターミルクで料理を胃袋に流し込んでいた (写真9)。
シダマ農牧民はトウモロコシで無発酵のパンをつくる。これはティマと呼ばれ、無発酵なので出来上がりは硬く、腹持ちは良いものの、なかなか食べづらい。このティマを食べるときも、自然発酵乳やバターミルクが活躍し、相性も抜群だ。
このように、バターオイルは料理の仕上げとして、バターミルクは食事の付け合わせとして、多用され彼らの食生活を彩る不可欠な食材となっている。だからこそ、この地で生乳からのバターオイル加工が定着した一方、通年得られるバターミルクの存在によってチーズ加工が発達するまでには至らなかったことが理解できる。
日長が変化しないことに由来する生乳の周年供給、そして料理方法と食事の組み合わせという食文化が、乳加工技術の発達に大きく影響していることをシダマ農牧民の事例が明示している。
シダマの人々は今日も遠く日本と離れた赤道直下の地で、スモーキーで酸っぱいミルクを楽しんでいることだろう。
プロフィル
ひらた まさひろ
1967年生まれ、福井県出身。91年東北大学農学部卒業、93年東京大学大学院農学系研究科修士課程修了、98年京都大学大学院農
学研究科博士後期課程研究指導認定。京都大学東南アジア研究所研究員などを経て2004年帯広畜産大学畜産科学科助教授、07年准教授、17年人間科学研究部門准教授、18年4月から現職。1993~96年青年海外協力隊としてシリアで活動。農学博士 (京都大学)
DAIRYMAN 第75巻 3月号
昭和26年4月4日第3種郵便物認可
令和7年3月1日発行(月1回1日)
発売所
デーリィマン社
発行所 札幌本社 札幌市中央区北5条西14丁目
東京本社 東京都豐島区北大塚2丁目B69 ITY大塚ビル3階