メーカー 日本フルハーフ
車種 ウィングトレーラ DFWFX トラクタ
年式 1997年式
施工個所 日本フルハーフのウィングトレーラーのキングピンが破損の出張修理です。
作業日数 約2日
日本フルハーフのウィングトレーラのキングピンが破損してしまったと
お客様から連絡が入りました。
トレーラとは
トレーラのみで自走できないものですが、1台の自動車としての車検証があり固有の登録ナンバーがある車両で、トラクタ(運転する側)に連結されて移動ができる車両で、トレーラーのみではエンジンや運転するところがないため自走はできません。
トラクタ(運転する側)と、トレーラ(それ単体では走行できない)は頑丈につながっていないといけません。トレーラをつなぎかえる必要もありますから、手間をかけずに連結を繋げたり放したりする必要があります。
そのため、トラクタ側には「カプラ」という差し込み口があいた部品がついています。
トレーラ側には「キングピン」という大きなピンが装着されており、この部品にてトラクタとトレーラを連結させています。
トレーラとトラクタを外すときには、カプラ(トラクタ・運転する側)のロックを外し、トラクタ(運転する側)の車両を前方に移動することにより切り離す事が出来ます。
トレーラのキングピンが破損して走行できないとの相談と連絡で車両置き場に確認に行きました。
日本フルハーフのトレーラーを前方から見た状態です。写真の中心に見えるものがキングピンです。正規の状態はトレーラに対して直角に取りつけられている物が、車両に対して前方左側に傾いていました。
キングピンはトレーラの総重量をここで支えるため、特殊鋼が使われており、摺動面は高周波焼き入れが施工されております。
高周波焼き入れとは
電磁誘導作用による高周波誘導電流(IH)を利用して、秒単位で鋼材の表面だけを急速に熱し、急速に冷却することで、表面を硬化させる金属処理のことです。
耐疲労度と耐摩耗性に優れており、シャフトや歯車などの機械部品の焼入れに使用されております。
表面だけ(表面から1~2ミリを硬化させる)加工や、一部分だけの加工が可能なため、製品の過熱による寸法変化や変形を最小限に抑えられることが特徴です。
高周波周波焼入れで硬化する仕組みは、金属に銅線のコイルを巻きつけて電流を流すことで、磁力と同時に過電流が発生し、その時に発生する熱のより、鋼材に焼入れを行います。
メリットは交流の周波数を調整するだけで焼入れの深さの調整する事が出来ます。また、秒単位で管理、処理ができるので、表面硬化する作業を管理しやすいことと、内部は軟らかいため靱性の向上ができます。
デメリットは、複雑な形状の製品に対しては、鋼材に対して高周波誘導電流が一定にならないため、製品に対して表面硬化が均一になりにくく、難しいことです。
日本フルハーフのトレーラーを車両の後方から見て、キングピンの右側から撮影したものです。フルハーフのこの車両は軽量化するためにメインのフレームを含めてアルミで製作されている車両でした。キングピンは車両の重量のすべてをここで支えるため、強固なものでないと破損する恐れがあるため、キングピンガイド(キングピンが取り付く部分)がフレームにボルトで固定されている車両でした。
日本フルハーフのトレーラーを車両の後方から見て、キングピンの左側から撮影したものです。キングピンが8本のボルトのうち、7本が破損して1本でついている状態でした。残り1本もかろうじてついている状態でした。経年劣化での破損と考えました。
キングピンが破損しているので車両を動かす事ができません。そのため、現場で作業になりました。ウェスを使用してグリスを除去していきました。
ボルトを外して、キングピンを取り外しました。
日本フルハーフのトレーラーをキングピンを取り外した写真です。キングピンガイドを外そうと思い、手前側のボルトを外そうとしましたが、ナットが掛かっているようで外す事が出来ませんでした。
外すためには、ボディ内の床板をはがして作業をしないと外れない構造なので、時間がかかってしまうこともあり、お客様に相談した結果、キングピンガイドを外さずに作業することになりました。
日本フルハーフのトレーラーをキングピンを固定していたボルトです。4本については熱を加えたり、中心をドリルで穴をあけて、逆タップという道具を使用することにより外す事が出来ました。
キングピンの取り付け部をテーパーカット加工しました。これはキングピンガイドにキングピンを溶接するために、溶接が溶け込むように加工を施しました。
熱処理がされているため、ダイヘン製インバータ制御式エアープラズマ切断機(エアープラズマM-5500)ダイヘン製インバータ制御式エアープラズマ切断機(エアープラズマM-5500)ダイヘン製インバータ制御式エアープラズマ切断機(エアープラズマM-5500)という機械を使用して切断しました。
キングピンガイドにキングピンをボルトで固定しているところです。使用しているボルトはボルトに熱処理を加えた焼き入れボルトを使用しました。
日本フルハーフのトレーラーを前方から車両に対して垂直に取りつけられていることを確認しているところです。
その後、溶接をしていきました。
写真は溶接を完了したところです。現場に発電機を持ち込み、ダイヘン製デジタルインバータ制御式CO2/MAG自動溶接機(Welbee Inverter M500)ダイヘン製デジタルインバータ制御式CO2/MAG自動溶接機(Welbee Inverter M500)ダイヘン製デジタルインバータ制御式CO2/MAG自動溶接機(Welbee Inverter M500)を使用して溶接を行いました。
上向きでの溶接、トレーラの全荷重がかかる重要部品ということもあり、丁寧に作業を進めていきました。溶接時に必要以上に熱が加わらないように、冷却しながらの溶接になりました。
溶接完了後、ローバル株式会社製(常温亜鉛めっき ローバルスプレー300ml)ローバル株式会社製(常温亜鉛めっき ローバルスプレー300ml)ローバル株式会社製(常温亜鉛めっき ローバルスプレー300ml)を使用して塗装を行いました。
ローバルスプレーは常温で場所を問わずに施工できることから、弊社では使用することが多いです。このスプレーは溶融亜鉛めっきと同等の防錆力を発揮するようで、鉄のさび止めやめっきの補修はもちろん、古くなった亜鉛めっきの寿命を
さらに延ばすこともでき、耐候性が求められる橋脚の補修塗装や鉄塔などで使用さていることを知り使用しています。
今回は現場作業となりました。弊社より約30キロの距離(片道50分)にある車両置き場まで、車両確認、キングピン取外し、取り付け溶接と3往復しました。運搬できない車両、回送できない車両について現場にて無事修理する事が出来ました。
早急に修理を完了することが、あってはならない事故や故障時でも、少しでもロスを減らすお手伝いが出来ていると感じております。